「うん。式は人間嫌いなんだ。子供の頃からそう。
・・・・・・ほら、子供の頃ってさ、何も知らないじゃない。会う人全部、世界の全てが無条件で自分を愛していると思ってるんだ。自分が好きなんだから、相手も当然のように自分を好いてくれるって、それが常識になってるだろ」
「そういえばそうだね。子供の頃は疑うことをしなかった。たしかに無条件でみんなが好きだったし、好かれているのが当たり前だと思ってた。恐いものだってお化けだったもんな。今恐いのは人間だっていうのに」
まったく、と頷く織。
「でもさ、それはすごく大事な事なんだ。無知でいることは必要なんだよ、コクトー。子供の頃は自分しか見えないから、他人のどんな悪意だって気付きはしない。たとえ勘違いだとしても、愛されてるっていう実感が経験になって、誰かに優しくできるようになるんだ。──────人間は、自分が持っている感情しか表せないから」
/「空の境界 第二章 殺人考察(前)」より引用
無知でいることも、また時としては必要ということと、それに伴う危うさ。実感と経験をすることで芽生えた感情の大切さ。
他者とのコミュニケーションは、時として勘違い同士の危うい綱渡りみたいになりかねない。
それでも、それが新たな経験となり、新しい感情を得ることで、また誰かとすれ違い、そして出会うのでしょう。
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